一投式:シングル プア メソッド

2024年7月29日
「ドリップは粉をじっくり蒸らし数回に分けてゆっくり丁寧に注湯するものだ」 という固定観念を持つ方が結構な数いらっしゃいます。 ホントにそうでしょうか? 「蒸らしなし、一気に注湯、ものの数秒で注湯完了、粉は湯の勢いで踊る踊る」 そんな淹れ方はいけませんか? 答は飲んでみればわかります。 当店のお客さまにこのメソッドで淹れたコーヒーをお出しすると、 みなさん感動されていきます。 ということで、今回はみなさんの固定観念を打ち破る「一投式:シングル プア メソッド」をご紹介します。

淹れ方と基本レシピ

使用器具
ドリッパーORIGAMIドリッパーAir M
ペーパーCAFEC アバカ
サーバーKINTO Coffee jug 2cup
ケトルBrewista
グラインダーCOMANDANTE(MK3/MK4)
スケールハリオ V60スケール
淹れ方

動画の中では量などについては触れておりません。 次のレシピでご覧ください。

レシピ
豆の量16g(浅煎り〜中煎り)※1
挽き目COMANDANTE 10クリックまたはTIMEMORE C3 9クリック※2
湯量150ml
湯温80℃
注湯スピード20cc/秒
抽出時間1分30秒(注湯開始〜落ち切るまで)※3
  1. 中深煎りや深煎りでは濃度が高くなるので量は異なります
  2. TIMEMORE C2の場合は8〜9クリックですが、挽くのに300回以上回すことになりますので、COMANDANTEまたはTIMEMORE C3の方をお勧めします。COMANDANTE/TIMEMORE C3では90〜110回くらいで挽き終わります。
  3. 1分30秒で落ち切らなくてもそこで終了した方が良いです。

淹れ方のポイント

動画の流れに沿って淹れ方のポイントを説明します。[]内は動画の中で該当する時間です。

ペーパーの湯通し [0:03〜0:25]

これは一投式に限ったことではありませんが、 ペーパーを濡らし飽和状態にしておくことで、 コーヒーの成分をペーパーに吸い取られないようします。

湯通しするときは、ペーパーを上から軽くしっかり押え、 最初に中心を濡らすとペーパーが安定します。 ペーパーの縁側から中心に向うのではなく、 中心から縁に向かうように注いでいきましょう。

注湯 [1:10〜1:23]

できるだけ短時間で、粉をかき混ぜるように注ぎます。

20cc/秒くらいのスピードが理想です。 4:6メソッドの場合は10cc/秒くらいなので、 かなり速いし、勢いがあります。 この勢いを利用して粉を攪拌ましょう。

スピン [1:23〜1:42]

注湯した後、なにもしなければ中心部だけが陥没していき、 ペーパーに厚く粉がへばりつきます。 それでは、粉から十分にポテンシャルを引き出すことができないので、 スピンし、粉を下に落とすようにします。 初期の頃は写真のように勢いよくスピンしてください。

スピンは注湯開始から25〜30秒ほどで終わらせます。この時間が長すぎると、逆に目詰まりし1分30秒で落し切ることができなくなります。接触時間が長くなるため余計な苦みやしぶみなどが出てきて、クリアさに欠けるコーヒーになってしまいます。

下の写真はお湯が落ち切ったあとの状態です。写真1は粉がペーパーにへばりつくことなく下に落ちてフラットなコーヒーベッドを作っています。

写真1 良い例

写真2はスピンしなかった例で、粉がペーパーにへばりついています。この状態では、粉全体から十分なポテンシャルを引き出すことができません。

写真2 悪い例

抽出時間 [2:35〜2:44]

抽出時間は注湯開始から落ち切るまでの時間となり、これが1分30秒±5秒となるようにしてください。

これより短いとポテンシャルが十分に引き出せず軽いフレーバーとなります。逆に長いと余計な苦みやしぶみなどが抽出され、まろやかでクリアなフレーバーが阻害されます。

落ち切るまでの時間は、注湯のしかた、スピンの強さや時間で変わってきます。特にスピンの時間が大きく効いてきますので、ちょうど良い加減を見つけてください。スピン時間の目安は注湯開始から25〜30秒です。

メソッド誕生からレシピ確立まで

元々はPHILLOCOFFEAの粕谷さんのYoutubeで見た一投式がこのメソッドに興味を持ったきっかけです。 以前から浅煎り、中熬りのようにポテンシャルを活かした焼き方の場合、そのポテンシャルを最大限に引き出すにはどうしたらよいか?と考えていました。私の考えでは、

  • できるだけ細かく挽き
  • 高温で
  • 圧力をかけて
  • 淹れるというものです。その答の一つがエアロプレス+Prismoでしたが、粕谷さんの一投式を見たときに「圧力」はありませんが「あ!これだ!」と思いました。

    当時は、20gの豆(粕谷さんのレシピでは25g)をCOMANDANTEでもTIMEMORE C2でも12クリックで、98℃300mlのお湯で淹れていました。4:6メソッドほどではないが、十分に美味しいコーヒーだと思いましたが、やはり何か物足りなさを感じていました。

    「粉からポテンシャルを最大限に引き出す」

    これが一番のコンセプトなので、 もっと細かくしよう! 粉を最後まで使い切ろう! と、挽き目をさらに細かく、 スピンを入れて粉がペーパーにへばりつかないようにと 考えたのが今の淹れ方&レシピの原型となりました。

    しばらくは、このレシピを使っていましたが、 最近、エアロプレスの細挽きのレシピを検討する中で気づいた湯温を一投式にも適用してみると、的中でした。

    コーヒーを淹れるときは、 ブーストするところとブレーキするところの両方を上手く使い分けることが重要です。 ポテンシャルを引き出すために使っていた高温の湯温を あえて低温にすることでブレーキをかけ、 まろやかさやクリーンさを引き出すことができました。 もともと抽出時間を短時間にすることでブレーキをかけていましたが、 落ちる時間の調整より湯温の調整のほうが安定しているので、このレシピが正解なのでしょう。

    まとめ

    1. 固定観念を打ち破る蒸らしなしの一投式
    2. 極細挽きで一気に注湯する
    3. 最大1分30秒で湯を落とし切る
    4. スピンでフラットなコーヒーベッドを作りポテンシャルを引き出す